公共事業を施行するには、土地を取得したり、建物等を移転したりする必要が生じ、国、地方公共団体等は正当な補償を行います。 所有権や借家人等の関係人に生じる損失の補償やこれらに関連する業務を国、地方公共団体等の起業者から受注したり、請負ったりする者(法人又は個人)を補償コンサルタントといいます。 補償コンサルタントの行う業務は、8つの部門に分かれていますが、それぞれの補償コンサルタントが最も得意とする部門の業務を受注したり、請負うこととしています。
「補償」とは、公共事業を実施するには土地を取得したり、事業に支障となる建物等を移転してもらったりしますが、 簡単にいいますとこの場合の土地代金や建物等の移転料がこれに当たります。これらの費用(補償)は、国民の税金を財源とし、起業者で ある国、地方公共団体等から支払われます。損失と補償のあるべき関係は、常に均衡が取れていなければなりません。
公共事業を計画的に、しかも着実に実施していくためには、その前提となる用地が円滑に確保されることが不可欠といわれています。 昔から用地の取得が完了すれば、事業も9割かた完成したも同じといわれています。補償コンサルタントは、土地所有者・その他関係人の協力を得ながら、事業が計画的かつ着実に実施されるよう、用地の確保という面 から起業者をサポートしていることになります。つまり、公共事業を用地の面 から支えているといっても過言ではないでしょう。
「補償コンサルタント」は、国土交通大臣に登録することにより、最も得意とする業務が周知され、しかも財務状況、補償業務経歴等について審査を受けているので信用が確保されています。登録した補償コンサルタントには、それぞれの登録部門に専任の補償業務管理者を置くことにより適正な調査及び成果品を確保することとしています。公共事業に必要な土地等の取得若しくは使用に関する補償業務のうち、8の登録部門の全部又は一部について補償コンサルタントを営む者が、一定の要件を満たした場合に、国土交通大臣の登録が受けられる制度です。なお、登録の要件は次のとおりです。
補償業務管理士とは、一般社団法人日本補償コンサルタント協会が付与する用地補償業務従事者のための唯一の資格で、「優秀な人材の育成」、「若い職員の士気の高揚」、「登録部門の底辺の拡充」等の要請を背景に平成3年に制定された「補償業務管理士研修及び検定試験実施規程」に基づく民間資格です。
平成8年度「建設白書」では、「平成3年度に創設された補償に関する民間資格である補償業務管理士の制度の積極的活用を図っていくことにしている。」とされ、また、「用地体制ビジョン」(平成7年3月29日付け円滑な公共用地取得体制整備のための調査検討委員会(建設省に設置)取りまとめ)においても「補償業務管理士資格制度は、民間資格として高い評価を得ており、また、用地職員にとっても取得推奨する資格であって、さらに業界をあげて有資格者の増加や社会的地位の向上等制度の充実に努めるよう」求められてきた補償業務管理士は、今日では用地補償業務発注における技術者要件とされており、一層国土交通省等からこの資格制度に期待が寄せられています。
補償業務管理士研修及び検定試験実施規程(以下「試験実施規程」という。)第3条のこれまでの7部門に加え、新たに「総合補償部門」を設け、総合補償部門の補償業務管理士を「総合補償士」と称します。補償業務管理士資格制度は平成3年度に創設され、補償業務管理士は、物件の調査及び補償金の算定など用地補償業務の各分野における専門家として活躍しておりますが、近年、公共事業を巡る環境は大きく変化してきており、厳しい財政事情を踏まえ、公共事業の実施については、より一層の重点化・効率化による事業効果の早期発見が求められ、公共用地取得においてもより一層の迅速化・円滑化が要請されております。
補償コンサルタントは、起業者の公共用地取得をサポートし、補償業務管理士は、その業務の適正な執行を確保する上で中心的な役割を担っているところですが、こうした環境の変化を踏まえ、公共用地行政においては、事業のスピードアップを図る観点から、あらかじめ明示された完成時期を踏まえた計画的な用地取得を実現するための用地取得マネジメント手法の確立などが進められているところです。こうしたことから、補償コンサルタントに求められる能力も高度化し、公共用地取得に関する工程管理業務など、最適な公共用地取得を実現するためのマネジメント能力を必要とされる業務へとその役割も増大していくことが予想されます。
このため、用地補償業務全般に対して総合的な知見を有する優秀な人材を確保・育成し、これら新たな業務へ的確に対応することを目的として、平成20年7月25日付けで試験実施規程の一部を改正し、総合補償士を創設しました。
総合補償士の創設は、補償コンサルタント業の今後の受注機会の増大に向けた新たな展望を切り開くものであるとともに、新たな業務を遂行する上で、その中心的技術者として活躍が期待されることから、今後の業界にとって極めて有意義な制度となるものであります。